2022-01-22
柔道の様な黒帯に白い文字で「志熊」と書いてある。
しっ、志熊老師? ていうか、いつものパターンだよね?
「は、はい?」
「今、声を掛けたじゃろ?」
「は、はい。ま、挨拶をしただけです」無視したんじゃなかったのか。
グイと一歩前に出てくる。
「うむ、どっかで見た顔じゃの」
そりゃそうでしょ、あなたがあの人なら何度も会ってます。おまけにご兄弟にも。
「え、そうですかぁ(フェイドアウト)」
絡まれたらヤバイ人だから、早く行かなくちゃ。
今日の目的は、ぶらぶらしに来ただけだし。
「この辺も随分変わったのぉ」
立ち去る自分の背中越しに、まだ話掛けてくる。・・・大きな独り言だろうか。
ちらと後ろを振り返ると、花壇を構成するブロックの上に腰を降ろしている。
レ、レンズを取り出してる?
「レンズは、要りませんよっ、しかもNIK◎Nだなんてっ」
押し売りを始めようとしてんな。そもそもウチのはフォーサーズ機ですから。
「なあにを言っておるんじゃ」
近くにあった袋から水筒を出して、レンズキャップを開けて注ぐ。
な、なにしとんだ、防塵防滴祭りかよっ!?
見ると、レンズの中にホカホカのお茶が注ぎ込まれていく。
な、なんとマグカップか?
「そ、それ、マグカップなんですか?」
「ん?おうよ」
横目で一瞥をよこしながら、レンズをグイと傾ける。ノドが大きく上下に動く。
それ、メ◎カリに出てましたよね、絶対。
「おほう、やっぱり体が温まるのお、焼酎は」ぷはあと白い息が立ち上る。
さ、酒なんですが、仕事中に。
懐からガサガサ、ビニール袋を出している。
ん、それスルメでしょ、絶対。
「さ、酒飲んで、大丈夫なんですか?」ダメだ、いつものパターンじゃん。
「こんな寒いのにシラフで園芸なんぞできるか?まあ、誰も来んて」
スルメの片足をクチからはみ出しながら、くちゃくちゃしてる。
居たよね、電車にもこういうオジサン(昭和感)。
「いや、お仕事中ですよね。現場監督にも叱られちゃいますよ」
「わしを叱れる者なんぞ、おらんて」スルメの足が吸い込まれていく。
「作業中ですよね。高齢者の就職もこのご時世、厳しいでしょ」
「現場かんとくぅ?」首を傾げて、また一口グイとタンブラーを煽る。
聞いてないなこの人。
「首になっちゃても知らないですよ」後で現場事務所に行ってチクちゃうぞ。
大きな袖に両腕をツッコんで、どこか遠くを眺めてる。
「じゃ、失礼します」さ、あっち行こう。
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